研究概要

この度、理学府の再編により、分子科学専攻と凝縮系科学専攻化学コースが 化学専攻へとなったことに伴い、これまでの研究室名「計算化学研究室」を 「理論化学研究室」と改めました。 理論化学研究室では、以下のことを目標に研究を進めています。

化学は、分子および分子集合体の構造、性質、変化を解明することを目的と した学問であることは周知のとおりです。量子化学(計算化学)は、これらを、 シュレーディンガー方程式などの第一原理に基づいて、経験に頼らず理論的に 解明していくことを目指しています。

量子化学は、量子力学がその建設の後、数年を経ずして Heitler と London に よって水素分子に応用されて以来、計算機の発達とともに進歩し、現在では、 数原子からなる小さな分子の電子状態については、数 kcal/mol の精度で励起 スペクトルを予測し、化学反応のポテンシャルエネルギー曲面も非常に高い 精度で得ることができるようになってきました。実験事実の解明のみならず、 気相化学反応を十分に予測しうるような段階も近づいています。また、一方で、 小・中規模の分子だけではなく、実験室で扱われる大規模なリアル系をそのまま 計算できるところに手が届こうとしている段階にもあります。

とはいえ、化学の現象は、まだまだ複雑・多様で、それらの現象を経験的な パラメータを使わずに、第一原理から解明していこうとする量子化学の試みを 容易には許さず、残された挑戦すべき課題も数多くあります。生体分子、巨大 フラーレン、金属クラスターなど大規模な系を、反応に関わる重要な部分だけに ターゲットを絞りいかに効率よく記述するか、反応予測もできるほどに十分に 精密な記述をいかに達成するか、孤立分子だけなく、固体表面、溶液などの 環境下での化学反応をいかに取り扱うか、重い原子を含む系の電子構造、化学 反応を相対論的な効果を取り込んでいかに記述するか、これらは、残された 課題の一部です。本研究室では、このような認識を踏まえ、大規模系の理論と 高精度理論の両面とその統合を以下の研究などから、模索しています。

  1. 励起状態も高い精度で記述できる精密電子相関理論
  2. 相対論効果を取り込んだ分子軌道理論
  3. ab initio 分子軌道法に立脚した化学反応ダイナミクス
  4. 生体分子など大規模系の非経験的分子理論
  5. 固体・触媒表面上での化学反応、溶液中の化学反応など、 分子系と無限系の両方が関わるインターフェイス系の分子軌道理論の構築
  6. 実験研究と連携した新しい化学現象の解明

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